夏の三冊目
日本をもっと知りたい日本人に――
ソフィー・リチャード著『フランス人がときめいた日本の美術館』
>日本美術をこよなく愛するフランス人の美術史家、ソフィー・リチャード。
>10年かけて……綿密に取材を重ねた英語版は秀逸なガイドとして高く評価された。
>専門知識に裏打ちされたわかりやすい解説、旅行者のための実用情報はそのままに、
>日本の読者のために独自の編集を加えた美術ファン待望の書。
日本をもっと知りたい日本人に――
ソフィー・リチャード著『フランス人がときめいた日本の美術館』
>日本美術をこよなく愛するフランス人の美術史家、ソフィー・リチャード。
>10年かけて……綿密に取材を重ねた英語版は秀逸なガイドとして高く評価された。
>専門知識に裏打ちされたわかりやすい解説、旅行者のための実用情報はそのままに、
>日本の読者のために独自の編集を加えた美術ファン待望の書。
永遠の少年に――
明石家さんま著『Jimmy』
>幼い頃から何をやっても失敗ばかりの大西は、
>吉本でもとんでもないヘマばかり。
>そんな大西が、人気絶頂の明石家さんまと出会い、
>孤独や劣等感を抱えながら芸人として成長していく。
大人の女性に――
小泉今日子著『小泉放談』
>人は、四十にして惑わず、五十にして天命を知る。
>小泉今日子が、齢五十の節目に感じること、思うこととは?
>残りの人生を、力まず弛まず、自由におもしろく生きることについて、
>親愛なる二十五名のゲストたちと本音で語り合った約二年間の記録。
以下、J.D.ヴァンス著『ヒルビリー・エレジー』より
p258 心理学者が「学習性無力感」と呼ぶ現象がある。自分の選択が人生になんの影響も及ぼさないと思い込んでいる状態のことで、若いころの私もそういう心理状態にあった……だが、祖母と祖父が、そういう感覚に完全に屈してしまわないよう私を救ってくれ、さらに海兵隊が、新しい境地を開いてくれた。故郷で学んだのが無力感だとすると、海兵隊が教えてくれたのは強い意志を持って行動することだ。……ブート・キャンプの修了日……基地のなかをみんなを案内してまわっているあいだ、私は宝くじに当たったような気持ちだった……散髪が終わると床屋は代金を受け取ろうとせず、気をつけてがんばれよと言ってくれた。
p317 汚れた皿やチキンの骨がそのまま放置され、ソースや飲みものがテーブルにこぼれたままで、とにかくめちゃくちゃだった。後片付けをする人のことを思うと気の毒でならず、とてもそのままにはしておけなかったので、私は店に残った。10人ほどの級友がいたなかで、手伝ってくれたのは親友のジャミルだけだった。ジャミルもまた、貧しい家庭の出身だ。片付けが終わって「誰かの食べ残しを片付けなければいけない環境で育ったのは、たぶん、きみとぼくだけだろうね」と言葉をかけると、ジャミルは静かにうなずいた。
Hillbilly Elegy: A Memoir of a Family and Culture in Crisis by J.D. Vance
p254 「大好きなJ.D.へ」この出来事を知ったあと、祖母は手紙にこう書いてきた。「あの間抜け面のろくでなしどもが いつおまえをいじめだすだろうって思ってたんだ。とうとうやりやがったね。あたしがどんだけむかついてるか ことばでいいあらわせないよ……おまえはいままでどおり できることを一生けんめいやっていればいい あのIQ2のアホのくそったれ いっぱしの男みたいにえらそうにしているが 女もんのパンツはいてんだ そう思っときゃいい。あんなやつら大っ嫌いだよ」
怒りを爆発させたこの手紙を読んで、祖母は胸のなかのものをぜんぶ吐き出したと思っていた。ところが翌日、まだ言い足りなかったのだとわかった。
「元気かい あのアホがおまえにわめきちらしてる そのことばっか考えちまうよ おまえに怒鳴るのはあたしの仕事で あのバカどもの役目じゃない じょうだんだけどね。おまえはなんでも なりたいもんになれるんだ あいつらとちがって かしこい子だからね でもあいつらもおまえがかしこい子だってのはわかってるさ あいつらも あいつらがガミガミいうのも 大っ嫌いだ。わめきちらすのがやつらの商売なんだ。そのまんま一生けんめいやってりゃ おまえの勝ちさ」
何百キロも離れてはいるが、おっかないヒルビリーばあさんは、頑として私の味方でいてくれる、そう思った。
p319 ひとつ気になったのは、祖父母がはたしてくれた大きな役割を、誰にも知ってもらえていないだろうという点だ。親友たちですら、もしも祖母と祖父がいなければ、私の人生には希望などなかっただろうということを理解してくれる人は少なかった。私はおそらく、自分が誰よりも世話になった人に、日が射すのを望んでいたのだと思う。
以下、J.D.ヴァンス著『ヒルビリー・エレジー』より
p275 初めて車を買いに行ったときも、上官が、年長の隊員を指導役として私に同行させたので、本当はBMWが欲しかったのに、実用的なトヨタやホンダといった車に落ちつくことになった。21パーセントの利率でローンを組もうと、ディーラーと直接、契約を結びかけたところで、そのお目付役は怒りだし、海軍信用組合に電話して、相見積もりをとるよう私に命じた。半分以下の利率だった……海兵隊では、こういった決定をするときにも戦略的に考えることを求められ、そのためにはどうすればいいのかを徹底的にたたきこまれた。
p277 友人が茶化して言うように、私の顔はラジオ向きだった。
『ヒルビリー・エレジー』J.D.ヴァンス著
トランプと白人労働者階級に結び付けられがちな話題の本、だけれど
この本の魅力は、とあるアメリカ家族の会話、そこに尽きると思う。
p271
>だがリンジーが先に言った。
「そうじゃないでしょ、母さん。おばあちゃんは、私たちのお母さんでもあったのよ」
この言葉がすべてを物語っていた。私はそのまま黙っていた。